埼玉県警は、自動車免許の高齢者講習や認知機能検査などをスムーズに受けることができる高齢者専用の免許更新施設「岩槻高齢者講習センター」をさいたま市に開設した。全国初の試みで、高齢ドライバーの増加により長期化している講習・検査の待ち日数の緩和を促していく。
「岩槻高齢者講習センター」は延べ床面積約6300平方メートルの2階建てで、高齢者講習室20室や、認知機能検査室4室などを備える。受講枠は高齢者講習が1日当たり120人、認知機能検査が同180人で、合わせて1日最大300人まで受け付ける。
免許更新の際、70歳以上であれば運転指導や座学などの高齢者講習、さらに75歳以上であれば記憶力や判断力を検査する認知機能検査が加えて義務付けられている。埼玉県では免許更新期限が6カ月前に迫ると、講習や検査の日時が指定された案内はがきが届く仕組みだが、高齢者の増加に伴い、特に人口が集中する都市部での講習・検査の待ち日数が長期化。利用者が日程の再調整などをした場合に有効期限内に免許を更新できない恐れもあった。
新センターは県東、県南部の高齢者を中心に利用を促し、待ち日数の短縮や、免許更新における利用者の負担軽減につなげる。県警運転免許課の金泉豊次席は「免許更新者からは、スムーズに受けられて良かったとの評価をいただいている」と話していた。
一方、平時でも高齢ドライバーをサポートするため、県警職員が常駐する安全運転相談室を設置し、不安を抱える高齢者や親族が免許返納のタイミングなどをいつでも相談できる体制を整えた。同室には体験型の自動車シミュレーターも備える。モニターに表示された指示に合わせて、ハンドルやアクセル、ブレーキなどを操作すると、カメラで映した足下や手元の反射神経を職員がリアルタイムで確認。状況に応じて、職員がアドバイスをし、免許返納のきっかけにしてもらいたい考えだ。
高齢ドライバーの支援については、公明党埼玉県議団(蒲生徳明団長)が一貫して推進してきた。2019年6月の定例会では、萩原一寿議員が他自治体の高齢ドライバー支援の事例を紹介しながら高齢者講習を多くの人が受講できる体制の構築を強く訴えていた。
蒲生団長は「高齢化が進んでいく中で、センターの開設はとても意義がある。今後も安全安心につながる環境を整えていく」と決意を語った。
公明党の石井啓一幹事長は9月17日、党埼玉県議団(蒲生徳明団長)が県庁内で開催した県内各種団体との意見交換会に出席し、8団体から要望を受けた。西田実仁県代表(参院会長)、輿水恵一衆院議員、矢倉克夫、宮崎勝両参院議員が同席した。
このうち、一般社団法人埼玉県建設業協会の小川貢三郎会長は、人手不足解消へ県が推進しているDX(デジタルトランスフォーメーション)化に触れ、「デジタル機器導入の資金を捻出できない企業が多い」と主張して支援制度の必要性を訴えた。また、物価高騰に対応した公共工事予算の確保などを求めた。
石井幹事長は「国土強靱化を進めるためにも、必要な予算を確保して支援していく」と述べた。
経済活動と環境負荷の軽減を両立させるため、埼玉県は資源の有効活用や廃棄量の抑制を図るサーキュラーエコノミー(循環経済)を推進している。企業に対する相談支援や補助金制度の充実のほか、ペットボトルの分別回収イベントの実施など県民への普及啓発を展開。その効果が県内で広がりを見せている。
埼玉県は、循環経済の理念に基づく新たなビジネスモデルの創出に向けた企業間の連携を進めている。昨年6月には、さいたま市中央区の県産業振興公社内にワンストップ支援拠点「サーキュラーエコノミー推進センター埼玉」を開設。中小企業診断士などのコーディネーターが企業の製品開発や事業に関してアドバイスするとともに、国や県の各種補助金を紹介する。
こうした支援を活用し、県内で先進的なモデルケースが誕生している。県の補助金事業に採択された所沢市の株式会社ティービーエム(佐原邦宏代表取締役社長)は、食品工場から排出される「油泥」を基にバイオマス燃料を精製する「資源化装置」を開発。同社は製品販売へ、越谷市の食品工場に装置を導入して精製されたバイオマス燃料をボイラーや発電の燃料などに再利用する循環システムの確立をめざす。脱炭素の推進や廃棄時のコスト削減、作業員の労働環境の改善にもつながる好事例となっている。
佐原代表取締役社長は「県から開発費の3分の2が補助され、装置開発を進めることができた。北海道に次いで食料品の製造品出荷額が多い埼玉県から、循環経済の全国モデルを作っていきたい」と話す。
循環経済に対する県民の認知度を上げるため、県は地元サッカーJ1チームの「浦和レッズ」と連携。埼玉スタジアムでの毎試合前にペットボトルを本体・ラベル・キャップの三つに分別した回収を呼び掛けており、県民を含む来場者を巻き込んだ意識啓発を進めている。また、分別回収されたペットボトルを原料にしたオリジナルマグカップを選手が手渡すイベントを定期的に開催するなど、多くの来場者にアピールする機会を設けている。
昨年は計10回にわたってスタジアムでの分別回収を実施。初めは回収したペットボトルのほとんどが三つに分別されていなかったが、最後の回収では分別率が71%まで上昇した。今年も分別回収を呼び掛けており、県担当者は「開催回数を重ねるごとに分別回収量が増えており、県民の関心が高まってきているのを実感する」と手応えを語る。
サーキュラーエコノミーを巡っては、公明党県議団(蒲生徳明団長)の各議員が議会質問を通して訴えてきたほか、2022年12月に大野元裕知事へ予算要望を実施するなど、一貫して訴えてきた。蒲生団長は、「県民や企業の持続可能な社会に向けた活動がさらに進むよう、より一層支援していきたい」と語っていた。
循環型社会の実現に向け、埼玉県は下水処理場から排出される汚泥の堆肥化と肥料化を進めている。4月末には、農林水産省が新設した規格「菌体りん酸肥料」に全国の自治体で初めて登録。世界的に高騰する化学肥料に代わる安価な肥料として普及が期待されている。
下水処理場は通常①沈砂池②最初沈殿池③反応タンク④最終沈殿池⑤消毒施設――の五つの工程を経て水を浄化し、川へ放流する。②~④の工程で排出される汚泥の量は、埼玉県全体で年間約50万トン。ほとんどが焼却され、灰をセメントの原料などに活用していたが、堆肥や肥料に転換することで、地域での資源循環に寄与できる。
このうち、桶川市にある元荒川水循環センターは、県北部3カ所の焼却炉がない流域下水道施設の汚泥を活用して堆肥を生産。汚泥を濃縮、脱水し、微生物の働きで有機物を分解する「好気性発酵」によって堆肥化する。
県は昨年、汚泥を短期間で発酵できる試作試験機を同センターへ導入。これにより、植物の成長に欠かせないリン酸が平均5・2%、窒素が平均3・6%と多く含まれ、悪臭のない堆肥が出来上がった。また、カドミウムや水銀などの有害成分も基準値以内で、安全基準はクリアされている。
県北部3カ所の下水道施設から排出される年間約1万トンの汚泥を全て堆肥にすると約2000トン生産でき、二酸化炭素(CO2)を年間約740トン削減できると見込まれている。県は今後、大量の汚泥を発酵処理できる「堆積型」による本格実施をめざし、試作を重ねる予定で、堆肥を土壌改善や花卉栽培などに有効活用することを考えている。
一方、戸田市にある荒川水循環センターは、汚泥の肥料化を進める。汚泥焼却炉で発生した燃焼灰を活用した肥料「荒川クマムシくん1号」を開発。下水汚泥などの国内資源から作られる肥料の利用促進のために農水省が新設した「菌体りん酸肥料」に登録したことで、肥料メーカーに提供できるようになった。
同肥料は、リン酸の成分保証が16%以上あり、有害成分も国の基準以下の数値。他の肥料や原料と混合・調整を通じ、海外からの輸入に頼っている化学肥料の代替として安定供給できる。
下水汚泥の活用に向け、公明党県議団は、蒲生徳明団長が2017年2月定例会予算特別委員会で、安藤友貴議員が22年9月定例会で訴えるなど、一貫して推進してきた。県は今後、焼却施設のある他の場所でも燃焼灰の肥料化の実現を検討する方針だ。県下水道事業課の水橋正典課長は、「地域の農家に使ってもらい、下水汚泥の堆肥と肥料の認知度向上や安全性、効果をPRして利用者を獲得していきたい」と語っていた。
埼玉県では、がん治療による外見(アピアランス)の変化に悩む人や、AYA世代(15~39歳)のがん患者の終末期医療(ターミナルケア)に対して、各自治体で経済的負担を軽減する助成事業が広がりを見せている。背景には、支援を実施する市町村を補助する県の「がん患者ウェルビーイング支援事業」がある。公明党県議団(蒲生徳明団長)が推進し、2024年度からスタートした。
県の同支援事業は、「アピアランス助成事業」と「AYA世代終末期在宅療養支援事業」を実施する県内の市町村を対象に、各自治体がそれぞれのがん患者に支払う助成額の半分を県が補う仕組み。県内全63自治体のうち、がん患者への経済的支援を実施している自治体数は、アピアランスケアが21市町、AYA世代のターミナルケアが10市町(2024年6月6日現在)。本年度以降の実施予定や、実施に向けて検討している自治体も増えている。
「アピアランス助成事業」は、抗がん剤治療によって頭髪が抜け落ちてしまった人や乳がんの手術で乳房を切除した人が対象。ウィッグ(かつら)や補正具などの購入費に適用する。
「AYA世代終末期在宅療養支援事業」は、介護保険の対象外である39歳以下の終末期がん患者が安心して自宅で最期を迎えられよう、療養生活に必要な介護サービス料を助成する。例えば、週1回の訪問介護・入浴介護と福祉用具の貸与費用や、福祉用具の購入費用、医師などの意見書作成料が補助メニューとなっている。
本年度から両事業を開始した久喜市は、アピアランスケアとしてウィッグなどの購入費を上限1万円で補助。39歳以下のがん患者の在宅ターミナルケアとして、訪問介護・入浴介護、福祉用具のレンタルなどのサービス利用料を9割(月額上限7万2000円)助成するほか、腰掛便座や簡易浴槽といった特定福祉用具購入費の9割(上限9万円)、申請に必要な意見書作成料を5000円まで補助する。同市担当者は「県の補助があることで自治体の負担が抑えられるので、両事業を開始しやすい環境になった」と語る。
がん患者への支援については、蒲生団長が2016年12月定例会で訴えたことを皮切りに、党県議団が一貫して推進。20年12月定例会で橋詰昌児議員が、22年9月定例会で萩原一寿議員が、昨年2月定例会で西山淳次議員(当時)が粘り強く訴えてきた。現在も党のネットワークの力を生かし、各自治体で公明議員が議会質問や予算要望を実施するなど、支援が一人でも多くのがん患者に届くよう、一丸となって事業の展開を進めている。
埼玉県は2023年7月、LGBTなど性的少数者への理解促進に向けた基本計画を策定し、現在、性の多様性を尊重する事業を加速させている。基本計画では、LGBTへの理解を深める県の「にじいろ県民講座」をさらに充実させることに加え、学校や企業での理解の輪を広げるため、2023年度から3年間で達成すべき指標を具体的に掲げている。
基本計画に定めた23年度から3年間で達成すべき指標は、①「にじいろ県民講座」の推進②県内の全公立小中高校で性の多様性に関する授業などの実施③LGBTに理解ある企業数の拡大――の3本柱。
このうち、にじいろ県民講座に関しては、オンラインで配信している「埼玉県LGBTQ県民講座」の動画視聴を推進。県のユーチューブチャンネルから視聴でき、LGBTの基本知識を学んだり、当事者の体験などを聞いたりすることができる。ユーチューブ動画は1万8000人の視聴目標に対し、1万9244人(2024年1月30日時点)が視聴し、すでに目標を達成した。この状況について県の担当者は、「引き続き動画の内容を改善しながら、より多くの人に見てもらえるよう努力したい」との考えを示している。
また、LGBT当事者の児童生徒はどの学校にもいる可能性があることから、全公立小中高校の授業などで児童生徒の理解増進に努める。具体的には、県は児童生徒用と教職員用のリーフレットを全校に配布。全公立校が授業やホームルームで性の多様性について学び合う機会を作る計画だ。
一方、企業に対しては当事者に対する理解ある取り組みを認定する「埼玉県アライチャレンジ企業登録制度」を創設。性の多様性尊重へ企業が取り組むべき指針を示し、県内企業の活動状況を見える化するもので、当事者が働きやすい環境づくりを後押しする。県は220社への拡大を目標に掲げ、これまでに40社が登録している。
LGBT当事者に対する理解促進について公明党県議団(蒲生徳明団長)は、2020年9月の定例会で当事者支援を強く訴えたほか、党のネットワークを生かし、同性カップルを公的に認めるパートナーシップ制度の県内自治体の拡大に尽力してきた。
党県議団はこのほど、県内のLGBT当事者らでつくるNPO法人「レインボーさいたまの会」の鈴木翔子代表理事らと懇談。その中で鈴木代表理事は、「企業や教育現場などで理解増進が進むことは非常に重要だ」と評価した上で、「これをきっかけにLGBTをはじめとした、さまざまな人権に関する問題解決に向け、国や県での取り組みを加速させてもらいたい」と期待を寄せた。
蒲生団長は、県が20年度に実施した「多様性を尊重する共生社会づくりに関する調査」で県民の3・3%に当たる約24万人がLGBT当事者に該当するとの結果が出たことに触れ、「『見えないマイノリティー』といわれるLGBTへの支援の手をより一層推進していきたい」と力を込めた。